一生使えるパチスロ

会社をつぶすということは、借入先への返済もできなければ、さまざまな支払いもできなくなることだ。
不義理以外のなにものでもない。 なにより、多くの人にダメージを与えてしまう。
取引先をはじめ、それまでビジネスを続けてきた関係者に、深手を負わせてしまうのだ。 だが、おそらく、もっとも傷つき、のたうち回るような苦しみを味わったのは、ほかならぬN自身であったはずだ。
人一倍の行動力、エネルギーの持ち主らしく、Nは倒産した後も、すぐに、再起に向けて、ビジネスを再開している。 だが、人生、落ち目のときはそういうものなのか、やることなすこと、うまくいかない。
Wいまになって見れば、焦るあまり、ろくすっぽ検討することもなければ、熟考することもなしに、ちょっとした思いつきぐらいで、次々に仕事をしかけてしまうのだ。 「ディスコをやってみたり、思いつき程度で流行の店を出したりもしました。
でも、根本的にそれらの業界については素人です。 しかも焦るばかりで、十分な準備をしないままに突っ走っていくだけですから、片っ端から失敗してしまう」(Y)人はどんな場合にも「それでも飯は喰わねばならぬ」のだ。
失敗したら、すぐに次の仕事をしかける。 何回かそれを繰り返した経緯は、なんとなくわかるような気がする。
そのうえ、倒産による負債総額200億円が、どんとNの肩にかかってきた。 非公開企業であったから、負債はすべて、Nが個人保証していた。
Tの倒産により、Nは、200億円という、気が遠くなるような負債を返済していく義務を背負うことになったのだ。 経験のない世界で仕事をし、どうにか利益を出したとしても、そんなものは「焼け石に水」にしかならない。

まさに、働けど、働けど……の日々である。 これ以上なく真剣に取り組んでいるつもりで仕事をしているのに、なにもかも、空回りしてしまう。
「オレの一生はどうなってしまうんだろう」しばしば、こんな思いに沈潜したこともあるというが、それも当然かもしれない。 Nは30歳になっていた。
故郷の大湊を後にしてから、十年余りの歳月が流れていた。 この間にNは、栄耀栄華の頂点をきわめ、そして、いまやどん底に落ちてしまったのだ。
なまじ華々しい時期を経験した後だけに、その落差はNにいたく響いた。 田園調布の家も手放した。
自慢だった車も全部売った。 N夫人は、宝石や高級ブランドの時計など換金できるものはすべて差し出し、家の預金もすべて、「これを役立ててほしい」とNに手渡したという。
このころ、倒産に追い込まれたディベロッパーはいくつもあったが、なかには、何億円かの金を隠し持ち、水面下にひそみ、いまものうのうと暮らしている経営者やそのファミリーも少なくない。 だが、Nは、文字どおり、丸裸、無一文になった。

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